家族葬はトラブルが起こりやすい?事例と対策を解説
家族葬は現在、すでにポピュラーな葬儀として浸透しています。
芸能人が亡くなったときも、親しい人のみで執り行うケースが増えてきました。
もちろん、コロナ禍の状況を反映している、という面もあるでしょう。
とはいえ、核家族化や少子化、高齢化社会といわれる今、その状況が改善される兆しが見えづらいのも事実です。
今後、家族葬で故人を見送る機会は、更に増えていくと思われます。
ですが、家族葬は思いがけないトラブルが起こる可能性も秘めています。
代表的なトラブルと、その対策について解説します。
家族葬でのトラブルは親戚関係が多い
家族葬を行うことで予想されるトラブルのうち、最も多いのは「親戚関係のトラブル」です。具体的な内容を3つ挙げてみます。
- 家族葬に呼ぶ範囲
- 家族葬で葬儀をすることへの理解
- 予想以上に費用がかかるかもしれない
1.「家族葬に呼ぶ範囲」
家族葬とは、故人の身内・親戚、親しい人のみで行います。
そうなると、親戚のうち「誰を呼ぶか?」について遺族が判断することになります。
そのとき呼ばれなかった親戚が、故人の訃報を知ったとき
「どうして呼んでくれなかったの?」
「最後の挨拶くらい、したかったのに…」
と、ショックを受けるかもしれません。
そうなると、今後の親戚づきあいにも支障が出てきたり、お互いに気まずくなったりするでしょう。
2.「家族葬を行うことへの理解」
亡くなった人への思いや、死生観は様々です。
家族という最小単位のコミュニティ内ですら、個人の考えや思想があり一人一人違います。
親戚全員ともなれば世代も違いますから、家族葬への理解を得るのが難しいケースもあるでしょう。
たとえ、故人の生前の意思によって家族葬を行うとしても、
「そんなのではいけない、ちゃんとした葬儀をするべきだ」
という人もいるでしょう。
互いの意見を主張しつづけた結果、親戚づきあいが絶たれてしまった、ということも起こりうるのです。
3.「予想以上に費用がかかるかもしれない」
リーズナブル、かつコンパクトな家族葬ではありますが、そこにだけ注目していると予想外の出費に驚いてしまうかも知れません。
一般的な葬儀では、参列者からのお香典を葬儀費用に充てて、ある程度費用を抑えられます。
これが家族葬の場合、お香典を辞退するケースが多く、また参列者の数も限定されます。
結果的に、葬儀費用の支払いが高額になってしまうのです。
ほかに、葬儀に必要な道具やサービスが有料オプションだった、という事例もあります。
また、葬儀当日や直前になってサービスを追加するなどして、当初の見積もりになかった費用がかさんだ結果、高額の請求に困惑することが予想されます。
トラブルを事前に回避するために
では、これらのトラブルを事前に回避するための方法を見てみましょう。
1.「誰を呼ぶか」について
- 事前に家族葬を行うことを親戚に相談、説明をする
- 訃報を連絡する人や参列人数を把握するためのリストを作成する
ことで、大体の人数や範囲を把握できるでしょう。
具体的な例としては
- 故人の両親や子供の家族、兄弟など
- 上記に加えて故人のいとこ、おじおば、甥や姪を含む(最も多いケース)
- 遺族や親戚に加え、故人と親しくしていた人など
です。
2.「家族葬への理解」
事前に家族葬を行う予定であることを、親戚に伝えておきましょう。故人の希望で行う予定なら、そのことも一緒に伝えましょう。
事前に知らせておけば「そうなんだね、分かったよ」と納得してもらえるでしょう。
故人の死を悼む気持ちは、誰でも同じです。
見送りたい、という気持ちをくみ取って対応すれば、トラブルになりにくいでしょう
3.「予想以上の出費」
家族葬の相場は、おおよそ40万~150万円ほどです。
もちろん、地域差もあるので一概には言えません。
ただ、家族葬といえど葬儀に呼ぶ人数が多ければ、それだけ規模も大きくなります。
結果的に、一般葬と同じくらいの費用になることも想定できます。
また、家族葬のプランは多様で、内容の把握には見積もりが欠かせません。
見積書が発行されたときに、各項目の金額をしっかり確認しましょう。
そして気になるところは、都度確認してください。
葬儀会社によっては、事前相談を受け付けているところもあります。
事前相談では、葬儀の規模や会場、形式や内容・演出、葬儀に必要な物などを一緒に考えたり、教えてもらったりできます。
更に、自分自身の葬儀についても相談できます。
トラブル回避のために、終活の一環として相談してみるのも、よい選択でしょう。
そのほかのトラブル
家族葬で想定されるトラブルは、ほかにもあります。
考えうるものをいくつか挙げてみました。
近隣トラブル
家族葬を家族や親戚に限定して行うと、故人と親しくしていた人を呼べず、
「私も葬儀に参列したかったのに…」
「あの人は呼ばれたのに、私は知らせてもらえないなんて…」
と、疎遠になるかもしれません。
また、葬儀後に自宅へ弔問に訪れる人への対応に追われて、精神的に疲れることもあります。
ほか、親戚トラブルの項目でも書きましたが、家族葬という葬儀スタイルへの理解が得られず
「冷たい人」
「常識のない人」
と白眼視され、遠巻きにされてしまう恐れがあります。
対策
事前に家族葬を行う旨を回覧しておくと防げます。
弔問や香典を辞退するなら、同時に伝えましょう。そうすると、近隣の人たちも迷わずにすみます。
ただ、葬儀日程については伏せておいた方がよいかもしれません。
近所づきあいが密接な地域では、たとえ辞退していても、近所なのだからと訪ねてくる人もいるでしょう。
訃報と、故人の遺志による家族葬であることを伝えれば、理解を得られるはずです。
ですが「どうしてもお別れの挨拶をしたい」と訪ねてきた人を、無理に拒む必要はありません。
その気持ちをありがたく受け止めて、参列してもらいましょう。
柔軟な対応を心がければ、お互いに気持ちよく故人を見送れます。
故人が会社経営者であったり、地域との関わりが深かったりなどの場合は、葬儀後に「お別れ会」や「偲ぶ会」を開くとよいでしょう。
菩提寺(納骨・戒名など)
家族葬を行うことを菩提寺に連絡しなかった場合、納骨できないリスクがあります。
見落としがちですが、重大なトラブルに発展する可能性があり、軽視できないポイントです。
対策
家族葬は、そもそも自由度の高い葬儀です。そのぶん、菩提寺で行うより費用を抑えられるのがメリットです。
ただ、菩提寺との付き合いがある家が家族葬を行うときは、一言連絡しておきましょう。
お寺によっては、菩提寺以外での葬儀を行った場合は納骨を受け付けない、としているのです。
また、戒名に関しても菩提寺との宗派が違うために、変更を余儀なくされることもあります。
故人を悼む気持ちは皆同じ
家族葬は浸透しつつあるとはいえ、人によっては
「お金ばかり気にする葬儀」
「故人への気持ちがない葬儀」
と感じられる面もあります。
ただそれは、故人とのお別れを惜しむ気持ち、遺族をいたわる気持ちがあるからこそ。
無理解を嘆くよりも、そうした人たちの気持ちを受け取った上で声かけなどの配慮があれば、トラブルは未然に防げます。
そのためにも、事前確認と周知はしっかり行いましょう。