墓じまいとは?メリットとデメリットや手順についても解説
「お墓を継ぐ人がいないとき、どうしたらいいんだろう」「お墓の管理や維持が負担になってきた」
代々続いてきたお墓を維持していくなかで、このように感じていませんか?
墓じまいでお墓を解体、撤去して遺骨を別の方法で供養すれば、管理や維持にかかる負担を減らせます。
ただし、墓じまいを独断で進めるとトラブルの元になります。そのため、親族や菩提寺とよく話し合い、依頼する業者を吟味してください。
なかには「墓じまいなんて、ご先祖様に失礼なのでは?」と感じる人もいるでしょう。墓じまいは、ご先祖様を大切にする気持ちの表れでもあります。その理由を記事で解説しています。
墓じまいのメリットとデメリットと手順を把握して、理解を深めるために記事を読み進めましょう。
墓じまいとは
墓じまいとは、お墓を解体および撤去して更地にし、その使用権を管理者に返還することです。お墓から取り出した遺骨は、改葬といって別の場所へ納めるか手元で供養します。
墓じまいが実施されるケースは、主に以下の3つです。
- 独立した子どもが地元から離れお墓参りしにくくなったため
- 親族の高齢化によってお墓の維持が困難になったため
- 自分が亡くなったあとにお墓を継ぐ人がいなくなるため
墓じまいにあたっては、親族や菩提寺とよく話し合いましょう。話し合うときは、新たに遺骨を納める場所や方法を決めてください。改葬先については後述します。
独断で進めると、親族や菩提寺とのトラブルが発生する恐れがあります。
墓じまいのメリット
墓じまいのメリットは以下の3つです。
- 子どもや孫にかかる負担を減らせる
- お墓の維持にかかる費用を抑えられる
- お墓参りがしやすくなる
子どもや孫にかかる負担を減らせる
墓じまいによって、子どもや孫にかかる負担を減らせます。
また、自分の死後にお墓を継ぐことへのプレッシャーを与えたくないという思いから墓じまいを選択することがあります。墓じまいを決めたときは、エンディングノートに改葬先や供養の仕方を書いておきましょう。
お墓の維持にかかる費用を抑えられる
お墓の維持や管理費用を抑えられるのは、墓地や霊園の年間使用料や檀家料をなくせるためです。改葬の仕方を永代供養や散骨にすれば、より年間の費用負担を軽減できます。
お墓参りがしやすくなる
お墓参りがしやすくなるのは、自宅近くに改葬したときです。
遠方にお墓があるとき、お墓参りや法事から足が遠のくことが多くなります。改葬先を自宅の近くにすれば、お参りしやすくなり罪悪感を減らせるでしょう。
墓じまいのデメリット
墓じまいのデメリットは以下の3つです。
- 親族や菩提寺とのトラブルが発生する
- 改葬後に遺骨を取り出せなくなることがある
- 費用が高額になることがある
親族や菩提寺とのトラブルが発生する
親族や菩提寺とのトラブルによって、人間関係に亀裂が入る可能性があります。
親族間のトラブルの原因は、価値観の違いや墓じまいの費用を誰が負担するのか、納骨先をどこにするかなどです。トラブルが起こると近所づきあいがしにくくなったり、気まずい思いをしたりするでしょう。
親族にお墓の継承者が複数いるときは、特に慎重に話し合ってください。
また、菩提寺への説明が不足しているとき、高額な離壇料を請求される恐れがあります。そのため、菩提寺があるときは必ず事情を説明して、同意を得ましょう。
改葬後に遺骨を取り出せなくなることがある
改葬後に遺骨を取り出せなくなることがあるのは、永代供養を選択したときです。
永代供養は一定の安置期間を過ぎると、他の遺骨と一緒に1つのお墓に納められます。他の遺骨と一緒に納めることを合祀(ごうし)といい、特定の遺骨のみを取り出すことはできません。
費用が高額になることがある
墓じまいにかかる費用が高額になるのは、お墓の解体および撤去が難しいときです。当てはまるケースを以下に2つ挙げました。
- 通路が狭いとき
- 1つの土地に複数のお墓が建っているとき
2つのケースで費用が高額になるのは、重機が使用できなかったり作業に手間がかかったりするためです。
墓じまいの手順
墓じまいの手順を以下にまとめました。
- 親族の同意を得る
- お墓の管理者または菩提寺に墓じまいの意思を伝える
- 業者を選定する
- 書類をそろえて提出する
- 遺骨を取り出してお墓を解体および撤去する
- お墓を更地にして完了する
墓じまいを検討しているときは、親族に相談して同意を得ましょう。話し合うときに、遺骨の供養の仕方も決めます。
親族からの同意を得たら、お墓の管理者または菩提寺にその旨を伝えてください。何も告げずに急に実行すると、深刻なトラブルに発展する恐れがあります。
墓じまいの依頼先は、代行業者か石材店です。依頼先を選定するときは、必ず複数の業者から見積もりを取って比較、検討してください。なぜなら、費用は業者によって異なるうえ価格が適正かどうかが分かりにくいためです。
業者を選定したら、墓じまいに必要な書類をそろえてください。お墓のある地域の役場で改葬許可を得るための手続きを行います。
自治体や墓地の管理者から発行してもらう書類は、以下のとおりです。
書類 | 書類の発行元 | 備考 |
---|---|---|
埋葬証明書 | そのお墓がある墓地や霊園の管理者 | 必要事項を記入する |
受け入れ証明書 | 遺骨の移転先となる墓地や霊園の管理者 | 同上 |
改葬許可申請書 | 今のお墓がある地域の役場 | 以下の3つを持参する ・埋葬証明書 ・受け入れ証明書 ・印鑑 |
改葬許可書は、役場に申請してから数日後に発行されます。
お墓から遺骨を取り出すときは、僧侶に「閉眼法要」の儀式を行ってもらいます。閉眼法要とは、お墓から故人様の魂を抜いて通常の石碑に戻す儀式です。
遺骨を取り出した後は、お墓を解体して撤去し、更地にします。更地になった土地を管理者に返還したら、墓じまいは完了です。
墓じまいにかかる費用の内訳
墓じまいに必要な費用を、内訳とともに以下にまとめました。
費用 | 内訳 |
---|---|
お墓の解体および撤去 | お墓の大きさや柵、使用する機材など |
お布施 | 閉眼法要、お車代など |
離壇料 | 菩提寺にお世話になったお礼 (お寺の墓地で管理してもらっている場合) |
改葬 | 改葬の方法によって異なる |
書類の発行 | 発行にかかる手数料 |
なお、金額は個々のケースによって異なるため、実際に問い合わせて確認してください。
墓じまい後の改葬先
墓じまい後の改葬先として挙げられるのは以下の4つです。
- お墓
- 手元供養
- 永代供養
- 散骨
新たに建てたお墓に遺骨を納めるときは、僧侶に「開眼供養」の儀式を執り行ってもらうため、お布施やお車代などを用意してください。開眼供養とは新しいお墓に故人様の魂を移すためのものです。
手元供養とは、自宅に遺骨を安置して供養することです。自宅に安置するとき、遺骨は分骨するかすべて引き取るかのどちらかを選択します。
手元供養の詳細は以下の記事をご覧ください。
永代供養は、墓地の管理者に供養や法要を一任する方法です。永代供養は樹木葬や納骨堂などでも取り扱っていることがあります。注意したいのは、一定の安置期間を過ぎると他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)することです。
永代供養について詳しく知りたいときは、以下の記事が参考になります。
散骨は遺骨を粉末状にして海や山にまくことです。散骨は法律の規定がなく、手続きは不要です。散骨の事業者へ依頼するときは、必ず複数の業者に相談してから決めましょう。
墓じまいは罰当たりな行為ではない
墓じまいは、決して罰当たりな行為ではありません。別の見方をすれば、墓じまいはお墓を無縁墓にしないという意思の表れです。
無縁墓とは、管理する人がいなくなってから放置されているお墓のことです。墓地や霊園の管理費用の未回収および倒壊のリスクがあるため、問題視されています。
つまり、墓じまいで供養の仕方を改めることは、ご先祖様を大切にする行為の1つです。
ただし、お墓には多くの人の思いが託されており、信仰の対象になっています。その人たちの気持ちを大切にするために、必ずお互いの意思を確認し、時間をかけて話し合ってください。
誠実な対応で悔いのない墓じまいにしよう
墓じまいとは、お墓を解体、撤去した更地を墓地の管理者に返還することです。墓じまいによって、子どもや孫の負担を減らせます。
ただし、墓じまいを独自の判断で進めると親族や菩提寺とトラブルになる恐れがあるため、必ず関係者からの同意を得てください。
墓じまいするときは、必要なものを把握したうえで周囲の人に事情を説明し、誠実に対応しましょう。