家族葬でお焼香のみ参列する場合のマナーとは?作法や宗派ごとの違いについても解説
親しい人やお世話になっている人の訃報を受け取ったとき、葬儀は家族葬で執り行うと告げられるケースがあります。
この場合、お焼香のみ参列したいと思う人は少なくありません。
家族葬においてお焼香のみの参列は可能なのでしょうか?
参列にあたってのマナーや作法、宗派ごとの違いについても解説していきます。
お焼香のみ参列してもよい?
お世話になっていた人や、親しい人が亡くなったと聞いたら「せめてお焼香だけでも…」と思うのが人情です。
結論から言えば、家族葬の場合は原則として参列出来ません。
家族葬は言葉こそ周知されているものの、まだまだ新しいスタイルの葬儀です。
それでも、遺族の心理的・経済的な負担を軽減させられる葬儀として、人気があるのも事実です。
家族葬では、厳密に作法やマナーが定まっていません。
とはいえ、参列は控えるのが無難です。
ただし、断りや遠慮の文言がなければ、ご遺族の方に連絡を取り確認してみてもよいでしょう。
家族葬に参列してもよいかを確認
家族葬に呼ばれるのは、故人と親しくしていた人や、身内、親族のみです。
この場合の「親しい」とは、家族ぐるみの付き合いがあった、もしくは故人が生前「あの人に来て欲しい」と言っていた、という間柄です。
「自分はそこまで親しくなかった、それでも…」
このように、せめてもと願う人もいるでしょう。
ケースバイケースですが、お焼香のみの参列でも喜ばれるご遺族もいます。
参列を控えた方がよい場合
葬儀の日程など具体的な情報がなかったり、断りや遠慮するなどと書かれていたりしたら、参列は控えましょう。
参列してもよい場合
葬儀の具体的な情報が書かれていて、なおかつ断りの言葉がなければ参列してもよいでしょう。
「葬儀の規模としては小さいものですが、参列してくれる方は受け付けます」という意味合いなら、このような連絡をします。
ただし、当日にいきなり訪ねるのは控えてください。
どんな場合であっても、事前に連絡を取って確認しておきましょう。
お焼香のみで参列するときのタイミング
実際にお焼香のみで参列することになったら、どのタイミングで訪ねるのがよいのでしょうか?
考えられる3つの機会があります。
お通夜の前
お通夜の準備が整って、これからお通夜が始まる、という頃合いです。
このタイミングは、遺族にとっても負担になりにくいでしょう。
式の始まる15~30分前に向かえば、故人にお別れの挨拶ができます。
お焼香を先に済ませられるため、遺族にもあまり気を遣わせずに挨拶する時間も少し取れます。
お通夜の後
通夜振る舞いのタイミングでお焼香する、ということもできます。
ただし、本来はご遺族が静かに故人を偲ぶための時間です。
ご遺族の負担にならないよう、配慮が求められます。
お焼香も静かにおこないましょう。
お焼香が始まる頃
一般的には葬儀が始まってから、30~40分頃にお焼香が始まります。
このタイミングで葬儀場に向かえば、故人とのお別れに立ち会えます。
実際にお焼香をするときは、葬儀スタッフの指示に従ってください。
お焼香を終えたら、静かに会場を後にしましょう。
以上、3つのタイミングでお焼香のみの参列が可能です。
ですが、いずれの場合であっても必ず、ご遺族に事前連絡をしてください。
いくらお別れの時と言っても、突然訪ねていくのは失礼にあたりますので注意しましょう。
お焼香の作法は3種類
ここで、3種類あるお焼香の作法を解説します。
立礼焼香
大半の葬儀で見られるお焼香です。
- 祭壇前で遺族に一礼
- 焼香台の前に立ち、遺族と祭壇を見て一礼
- 抹香をつまんで香炉に落とす(宗派によって回数が異なります)
- 遺影に向かって合掌、一礼
- 数歩下がり、遺族に一礼
立礼焼香の一連の流れは以上です。
座礼焼香
お寺など畳の会場で見られる作法です。
移動は腰を落として、お焼香は正座で行います。
基本的には立礼焼香と同じですが、焼香台の前に行くときには膝を使って移動します。
ただし、けがなどで膝を使っての移動が難しい場合、この限りではありません。
回し焼香
会場が狭い、もしくは自宅で行うときに見られる作法です。
焼香台を順番に回していって、自分の焼香が終わったら次に手渡していく、というスタイルです。
- 香炉が回ってきたら、一礼して受け取る
- 自分の前に置き、祭壇に向かって一礼
- 抹香をつまみ、香炉に落とす(宗派によって回数が異なります)
- 合掌して、一礼
- 次の人に回す
という手順です。
いずれの作法も、宗派によって差異があります。
簡潔ではありますが、以下にまとめましたのでご参照ください。
宗教・宗派ごとの作法
以下に、それぞれの作法をまとめました。
- 真言宗
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お焼香・おしいただくのは3回
お線香・3本立てます - 曹洞宗
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お焼香・おしいただくのは1~2回
お線香・1本立てます - 浄土宗
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お焼香・1回、左手を添えて軽くおしいただく
お線香・1本 - 浄土真宗本願寺派
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お焼香・1回、おしいただかずそのまま香炉に落とす
お線香・1本、火の付いた方を左にして寝かせる - 浄土真宗大谷派
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お焼香・2回、おしいただかずそのまま香炉に落とす
お線香・本願寺派と同じです - 天台宗
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お焼香・おしいただいて1~3回
お線香・1~3本立てます - 日蓮宗
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お焼香・1~3回(宗内宗派による)
お線香・1~3本立てます - 日蓮正宗
-
お焼香・おしいただいて3回
お線香・3本寝かせます
家族葬における独特のマナー3つ
家族葬には「ならでは」のマナーがあります。
そのうちの3つのマナーをご紹介します。
1.お香典は送らないものと考える
家族葬というスタイルを取る理由のひとつに「お香典返しの負担を軽減したい」というものがあります。
悲嘆に暮れている遺族にとっては「少しでも手続きなどにかかる負担を減らしたい」という思いから、家族葬を選択している可能性も考えられます。
お香典を辞退する旨が告げられていたら控えましょう。
そうでなければ用意しておくのが無難です。
辞退を告げられたら、そのまま取り下げても構いません。
2.服装や身だしなみ
たとえお焼香のみの参列であっても、喪服またはブラックフォーマルな服装で伺います。
靴下や靴も黒を選び、髪の色も黒染めスプレーを用いるなどして落ち着かせましょう。
服装だけでなく、髪の乱れや着こなしなど、全体的に清潔感ある装いを意識してください。
アクセサリーも最低限にとどめ、会場に入る前に外すなどしておきます。
3.遺族への配慮
家族葬を行う中でお焼香のみ参列する場合、突き詰めて言えば「割り込んだ」ことになります。
故人または遺族の意向で家族葬を選択しているのですから、多少なりとも負担になっているのです。
お悔やみの言葉と、参列させてもらったことへの感謝の気持ちは必ず伝えましょう。
お別れの会が開かれることもある
故人が地域の顔役を務めていたり、人脈の広い人だったりすると、後日「お別れの会」を開くことがあります。
ほとんどの場合、葬儀や告別式の後におこなわれます。
四十九日や一周忌のタイミングでおこなうケースもあります。
多くは会費制でおこなわれ、相場は1~2万円のようです。
ただし、お香典と共に遺族が辞退するケースも見られます。
案内状の指示に従いましょう。
悲しみの中にあっても配慮が必要
「まさかあの人が…」と、突然の別れに動揺し、涙に暮れる。
「最後の挨拶だけはどうしても」という気持ちは誰もが抱きます。
それでも、最も深い悲しみに沈んでいるのはご遺族です。
あなたの「挨拶がしたい」という気持ちをありがたく思いつつ、受け止めきれない事情もあるでしょう。
ご遺族の気持ちを尊重しながら、ありがたく参列させていただきましょう。