手元供養のメリットとデメリットは?成仏に関する疑問についても解説
手元供養とは、故人様の遺骨を自分の手元に安置して供養することです。2000年代から始まった、新しい葬送文化として広まりつつあります。
例えば、遺骨を加工してアクセサリーとして身につけたり、小さな骨壺や仏壇を部屋に置いて、故人様と一緒に過ごしたりということが可能です。とはいえ、親族からの理解を得にくく、また紛失のリスクがあることは否めません。
同時に、故人様が成仏できないのでは?という不安から、手元供養をためらう方もいるでしょう。
この記事では手元供養のメリットとデメリット、分骨と成仏に関する疑問について解説しています。合わせて手元供養品の必要性にも言及しているので、参考にしてください。
手元供養は3つのスタイルがある
手元供養は3つのスタイルから自分にあった方法で行います。ただし、いずれの場合も、遺骨の最終的な納骨先を決めてください。これについては後述します。
すべての遺骨を手元で供養する
故人様の遺骨をすべて骨壺に納めて、自宅で供養する方法です。そのため、骨壺のサイズは大きめになり、スペースが必要ですので注意してください。
遺骨を手元供養と散骨に分ける
遺骨から手元供養のために少しだけいただき、それ以外を散骨するという方法です。この場合、お墓は必要ありません。
遺骨を手元供養と納骨に分ける
遺骨のほとんどをお墓や納骨堂に納めて、手元供養のために少しだけいただくという方法です。お墓が遠方にあって、なかなかお参りに行けないという方におすすめできます。
手元供養のメリット
手元供養をするメリットは、主に精神的な安らぎを得られることです。ここでは3つピックアップしました。
故人様と共に過ごせる
亡くなった人と一緒にいたい、離れたくないと思う気持ちは誰でも同じです。手元供養というスタイルでなら、故人様と一緒に日常を過ごせます。写真を立てかけておいて、挨拶をしたり、手を合わせたりすれば故人様をより身近に感じられるでしょう。
大切な人を亡くしてつらい思いをしているご遺族様にとって、心の痛みを和らげるのにもつながります。
お墓参りに行かなくてもお参りできる
お墓が遠方にあって、お墓参りに行くのが大変な方は手元供養を検討してください。自宅に小さな仏壇や骨壺を安置しておけば、いつでも故人様をしのび、手を合わせられます。
また、お墓参りに行けない後ろめたさを抱く必要もありません。
大切な人といつも一緒にいられることで、前向きに日々を過ごせるようにもなるでしょう。
場所や形式を問わずに供養できる
手元供養品はコンパクトで、置く場所を問いません。ですからマンションやアパート、高齢者施設で生活するときも一緒に持ち込めます。
また、宗教や形式にこだわらず、自分らしい供養ができるのも特長です。遺骨をペンダントにしたり、お守りとして身につけたりと、あなたなりの供養を形にできます。
手元供養のデメリット
手元供養のデメリットは主に3つです。
親族の理解が得にくい
「遺骨はお墓や納骨堂に納めるもの」という考えを持つ親族からの理解を得にくいことが考えられます。それによって親族同士のトラブルに発展することもあるため、配慮が必要です。
いきなり手元供養を始めるのではなく、事前に手元供養を検討していることと、なぜ手元供養をするのかという理由を明確に伝え、了承を得ましょう。
遺骨の紛失
災害や引っ越し、盗難などによって遺骨を紛失してしまうリスクがあります。また、ペンダントに遺骨を納めている場合、ペンダントトップがちぎれてしまう可能性もゼロではありません。
こうしたリスクを避ける方法として、いくつかに分骨してそれぞれ保管するという手段があります。
カビの発生
保管場所や方法によっては、遺骨にカビが発生します。遺骨を保管するときは水回りの近くを避け、風通しがよく直射日光の当たらない場所にしてください。窓に近い場所も、温度差が激しいため避けた方がよいでしょう。
骨壺は密閉できるタイプのものを選んでください。また、遺骨を細かく砕いて真空パックで保管する方法もあります。
分骨と成仏について
手元供養は分骨して行うのが一般的なため、人によっては「故人様が成仏できないのでは?」「あの世で体が不自由になってしまう」と考えるでしょう。
結論からいえば、決してそのようなことはありません。同時に、分骨によってよくないことが起こるなどということもありません。どうか、ご安心ください。
遺骨を手元に置いて尊ぶことは、とても自然な行為であり、心のよりどころでもあります。
自分が故人様と共に過ごしたいと思うなら、その気持ちを大切にしてください。
宗教における分骨
仏教ではお釈迦さまの遺骨を「仏舎利」としてさまざまなお寺でお祀りしています。また、キリスト教においても、聖人の遺骨の一部を「聖遺骨」として大切に扱っています。
分骨は宗教における祈りの対象でもあり、決して亡くなった方を粗末に扱うということではありません。
遺骨の最終納骨先について
遺骨を手元に置いておくとき、自分にもしものことがあったときのために納骨先を決めておいてください。家族がいるなら、家族にも話をしておきましょう。
あるいは、自分の遺骨と一緒に埋葬してもらうか、永代供養のお墓を予約しておく方法もあります。
万が一の備えとして、エンディングノートに遺骨の扱いについて記入しておくと安心です。
主な手元供養品
手元供養品として主に流通しているものを、4つピックアップしました。
- ミニ骨壺
- ミニ仏壇
- アクセサリー
- インテリア用品
骨壺や仏壇はコンパクトなサイズで、お部屋の雰囲気やインテリアにマッチするデザインのものが多く販売されています。より心のこもった供養をしたいときは、故人様のイメージに合ったものを選んでみましょう。
アクセサリータイプは、少量の遺骨もしくは遺灰をペンダントや指輪などに納めます。常に身につけられるため、より故人様を身近に感じられるでしょう。アクセサリーをつけるのに抵抗がある方には、キーホルダータイプもおすすめです。
インテリア用品はぬいぐるみや砂時計など、一目では遺骨や遺灰が納められている(加工されている)とは分かりません。仏壇や骨壺を自宅に置くことがためらわれる場合でも、この方法でなら手元供養できます。
手元供養品は必須ではない
手元供養品はもっとも身近なお墓であり、ご遺族様の心痛をいやすグリーフケアの役割も担っています。
ですが、必ずしも手元供養品を新しく用意する必要はありません。火葬場から持ち帰った骨壺を自宅に安置して手を合わせるのも、立派な手元供養です。
遺骨や遺灰を納めるときに重要なのは、清潔な状態で保管できるものであることです。
故人様が生前大切にしていた小物入れやケースなどがあれば、そこに遺骨や遺灰を納めてもかまいません。
手元供養で亡き人と共に生きる
手元供養は故人様の遺骨をすべて、あるいは一部を手元に置いて供養する、新しい葬送文化の1つです。遺骨をアクセサリーに加工したり、小さな仏壇、骨壺を安置したりして故人様と共に過ごせることから、ご遺族様のグリーフケアを担う側面もあります。
ただし、手元供養品は必須ではありません。
火葬場から持ち帰った骨壺を大切に安置することも、1つの手元供養です。手元供養品を新しく用意する必要を感じないのであれば、その気持ちを大切にしてください。
実際に手元供養をするときは、まず親族の了承を得ましょう。また、遺骨の紛失リスクについても十分に気をつけなければなりません。
手元供養は故人様をしのび、前向きに生きるよりどころとして、あたたかく私たちに寄り添ってくれるでしょう。