自宅葬とは?葬儀の流れや必要なものについて解説
大切な故人様との最後のお別れとなる葬儀ですが、自宅でも行えることはご存じでしょうか?
現代では斎場にて行われるのが一般的ですが、かつては自宅で行われるものでした。
最近はコロナウイルスの流行や人との接触を避ける風潮から、自宅葬がにわかに注目されつつあります。
今回の記事で、自宅葬を行うメリットとデメリット、必要なものや葬儀の手配から葬儀までの流れについて説明します。
自宅葬とは
自宅葬とは自宅で行う葬儀のことです。基本的な流れは斎場で行うお葬式と変わりません。一般的な葬儀であれ家族葬であれ、葬儀を執り行う場所が自宅であれば全て自宅葬とされます。
1980年代以前は自宅で葬儀を行うのが一般的でしたが、斎場の建設が進んだほか、住宅事情などによって現在では9割の葬儀が斎場で行われています。
このようになじみが薄くなった自宅葬ですが、コロナウイルスの流行によって人との接触を避ける風潮が出来た今、葬儀を自宅で行うケースが増加しつつあります。
自宅葬のメリット
自宅葬のメリットは主に3つあります。
故人様のご意向に沿うことができる
故人様のご意向に沿った形で葬儀を執り行うことができます。例えば、生前に
「自宅で家族と過ごしたい」
「葬儀は自宅で行ってほしい」
と希望されていたなら、その思いをくみ取ることができます。
また、あるご家庭では「たった一人の親だから」と亡くなった親御様のために、とても素敵な祭壇をご用意された方もいらっしゃいます。大切な家族のためにせめてもの恩返しがしたい、感謝の気持ちを伝えたいというご遺族様の心を表わせるのも自宅葬のよいところです。
住み慣れた家から見送ることが出来る
故人様とご遺族様とで、ともに長く過ごした自宅にはたくさんの思い出がつまっています。自宅から故人様を見送ることで、生前の思い出を語り合い、悲しみを共有することで喪失の痛みをやわらげることも出来ます。
時間を気にせずにお別れの時間を取ることが出来る
また、お通夜ではかつて『寝ずの番』といって、線香を絶やさずにご遺族様が故人様に寄り添って過ごす時間がありました。現代では、多くの斎場が防災上の理由から『寝ずの番』を省略しています。
自宅葬であれば『寝ずの番』を省略せずに行えるため、お別れの時間を多く取ることが出来ます。本物のろうそくを使ったりお線香の取り替えを行ったりするのが難しいときは、ろうそく型のライトや長時間用のお線香で代用できます。
ただし、自宅で行うといっても騒いだり笑ったりすると近隣への迷惑になります。ご遺族様、ご親族様とで静かに故人様と過ごしましょう。
自宅葬のデメリット
自宅葬のデメリットは主に3つあります。
葬儀の環境を整える必要があり、全て行うと高額になる
家を建てたり購入したりするとき、はじめからそこで葬儀を行うことを想定している方はまずいないでしょう。ですから、葬儀の環境を整えなければなりません。ですが祭壇の設置や棺を安置する場所の確保など、住居によっては難しいこともあります。結果的に施工代や備品代などで費用がかさみ、通常の葬儀を行うよりも高くなってしまうケースもあります。
おもてなしの工夫
また、当日のおもてなしについても熟考する必要があります。個包装のお菓子やお茶の用意、もしくは故人様が生前好きだった食べ物やお酒を振る舞うことができます。食事を用意するときは、自分たちで作るのかケータリングを手配するのかを考えておきましょう。
近隣住民への配慮
更に近隣住民への配慮も欠かせません。葬儀関係者や参列者など、さまざまな人が立ち寄るので騒がしくなるほか、お線香やお焼香のにおいやお坊さんの読経などで心理的な負担を与える恐れがあります。自宅葬を行うときは、近隣に対して事前に知らせておきましょう。
自宅葬に適しているケース
以下のケースに当てはまる方は自宅葬に適しているといえます。
- 宗教にこだわりがない
- 故人様との時間を多く取りたい
- 少人数でのお葬式を希望している
故人様と過ごす時間と多く取りたい方には自宅葬が適しています。
また、自宅葬は一般的な葬儀と比べて宗教的要素が少ないという特徴があります。そのため無宗教、もしくは特定の宗教様式での葬儀にこだわりのない方に自宅葬は適しています。少人数でのお葬式を希望している方も同様です。
自宅葬に適していないケース
以下のケースに当てはまる方は自宅葬には適していないといえます。
- 故人様の人脈が広く参列者が多い
- 特定の宗教を信仰している
- 自宅の環境が葬儀に適していない
故人様の人脈が広く、お世話になった方が大勢いる場合は参列する人数も多くなるため自宅では手狭です。また特定の宗教を信仰している場合、宗教施設での葬儀を行うことがあります。ほかに自宅葬を希望していてもスペースの都合や棺の移動などに問題がある場合は断念せざるを得ないこともあります。
自宅葬を行うときに注意すべき3つのポイント
自宅葬を行うときに注意すべきポイントが3つあります。
- 集合住宅で行うときは事前確認をする
- 自宅のスペースを確保する
- エレベーターで棺を運べるかを確認する
首都圏では原則として個人で火葬場を予約、ご遺体を搬送することは出来ません。葬儀は自宅で行い、火葬は葬儀社に依頼してください。
集合住宅で行うときは事前確認をする
集合住宅で自宅葬を行うときは、周囲の住民への挨拶はもちろん、事前に大家さんや管理会社への確認も必要です。そもそも自宅葬を禁止している集合住宅もあり、自宅葬を行いたいを考えているときは早い段階で連絡して確認してください。
また、近隣との距離が近いため、お線香のにおいや読経の声などが住民へ精神的な負担をかけることがあります。そして、いつもより人の出入りが多くなるぶん騒音トラブルやクレームに発展することも考えられます。
事前の挨拶回りはもちろん、日頃から良好な関係を築いておくことも大切です。
自宅のスペースを確保する
棺や祭壇のことを考えると、最低でも6畳の広さのある部屋を確保しなければなりません。また、参列者のなかには到着してから着替えをするという方もいるでしょう。着替えのスペースやハンガー、姿見を確保してください。
お坊さんに来ていただくときは、控え室や椅子も必要です。
夏場や冬場の自宅葬では冷暖房が必要ですが、反面、電力トラブルが懸念されます。事前に電力会社へ連絡してアンペア数を確認しておくか、変更しておきましょう。
エレベーターで棺を運べるかを確認する
集合住宅での自宅葬はエレベーターの大きさにも注意が必要です。ストレッチャーや棺などをエレベーターで運べるかどうかを確かめておいてください。
なかには緊急時に備えてエレベーターの壁を開き、ストレッチャーを乗せられるタイプのものもあります。前もって管理会社や大家さんに相談してください。
自宅葬が出来る葬儀社に依頼するときのポイント
自宅葬を葬儀社に依頼するときのポイントは3つあります。
- 事前に下見をしてもらう
- 料金の内容を確認する
- 複数の葬儀社で見積もりを取る
自宅で葬儀を行うとき、当日になってスペースが不足していたり、棺を運び入れられなかったりしては大変です。あらかじめ葬儀社に下見をしてもらいましょう。仮に下見をしてもらったからといって、契約する必要はありません。
「見積もりを複数で取って、確認してから依頼します」と、はっきり伝えてください。
見積もりを取ったら、料金の内容を確認してください。あとから追加で請求される可能性についても、ここで確認しておくとトラブルを未然に防げます。気になる内訳があったら、あいまいにせずに確認していきましょう。
また、見積もりは複数の葬儀会社から取ってください。比較検討は大切ですし、オプションやプランの内容についてじっくり考える時間を取ってから契約をしたほうが、後悔のないお葬式が出来ます。
住み慣れた家から故人様を見送る
どんな人生を送っていても、誰にでも、家族と過ごした思い出のある家があります。とくに長期にわたって入院していたり、施設で過ごす時間が長かったりすると最期は自宅で迎えたいと考える方は少なくありません。
たくさんの思い出と、住み慣れた家や環境に囲まれて故人様と過ごすことが出来れば、ご遺族様と故人様とともに過ごした思い出に包まれながらお別れが出来るでしょう。