エンバーミングと死化粧の違いは?自分で出来ることと費用について解説
亡くなった方に対して行われるエンバーミングと死化粧。
どちらも故人様のケアを行うために混同しやすいのですが、明確な違いがあります。この記事ではエンバーミングと死化粧の目的と内容、費用相場について解説しています。
また、死化粧に関してはご遺族様が行えることもあり、その内容にもふれています。
ひとつ覚えておいてほしいのは、エンバーミングも死化粧も故人様の尊厳を守り、ご遺族様がお見送りの際に悔いを残さないために行うものであるということです。そこに上下はありません。
ご自身にとって、亡くなった方を最善の形で見送るための参考にしてください。
エンバーミングと死化粧の違い
エンバーミングと死化粧は、目的と手法が異なります。エンバーミングはご遺体の長期保存を、死化粧は旅立ちに際して身嗜みを整えることが目的です。それぞれの違いを詳しくみていきます。
エンバーミングとは
エンバーミングは、日本語でいうと「遺体衛生保存」です。科学的、外科医学的な防腐処置技術を駆使して、ご遺体を傷めることなく長期間保存できます。この技術によって、ご遺族様の心痛を和らげたり、故人様の傷ついたお身体をきれいにしたりということが可能です。
さらに、衛生面での問題も解決できるのでご遺体に触れられます。お別れの際に手を握ったり、髪に触れたりしても問題ありません。
土葬を行うことが多い欧米などではメジャーな技術ですが、日本ではまだなじみが薄く、耳慣れない言葉に眉をひそめる方もいます。日本では火葬を執り行うためでもありますが、近年は芸能人がエンバーマーの資格を取得するなど注目を集めています。
死化粧とは
死化粧とは、亡くなった方に対して施される化粧や、身嗜みを整えることをいいます。お葬式に参列した方は、一度は故人様のお顔を見たことがあるでしょう。そのとき、髪や肌がきれいに整えられ、顔色もきれいに見えたと思います。
このように、亡くなった方の顔や体をきれいにするのが死化粧の役割です。ご遺族様にとっても、安らかな顔で目を閉じている故人様の姿を見ることで、気持ちの整理をつけることができます。
エンバーミングの流れ
エンバーミングは以下の流れにそって行われます。
- 搬送
- 洗浄
- 身嗜みを整える
- 施術
- 着替え
- 化粧
- 搬送
故人様をエンバーミング施設に搬送して、お身体の状態を確認して洗浄と消毒をします。次に、お顔や髪を洗い、ひげを剃るなどして表情を整えます。ご遺体に保全液などを注入して施術を行ったら、お着替えとお化粧をします。その後、故人様をご自宅または葬儀会場まで搬送します。
現在、エンバーミング施設は全国で69ヵ所あります。施術にかかる時間はおよそ3〜4時間ですが、状況によって異なるので注意してください。
エンバーミングは有資格者が行う
エンバーミングを行えるのはエンバーマーの資格を有する者のみです。また、エンバーミングを行う場に立ち会うことはできません。
エンバーミングでは、ご遺体の長期保存のために体内に残った飲食物や排泄物、また血液などを抜き取ります。事故や病気などで故人様の身体に傷があっても、ある程度まではきれいに修復できます。
その後、身体や毛髪を洗浄して美容的な処置やお化粧でお顔をきれいに整えます。ご遺族様の期待に沿った衣服を着せることもあります。故人様の思い出のつまった衣装を着せる、生前好んでいたスタイルでコーディネートするなども可能です。
また、エンバーマーはご遺体をきれいにする技術だけではなく、次に挙げる知識や技術も必要です。
- 医学
- 生理学
- 葬儀葬送
- グリーフケア
エンバーマーは亡くなった方とご遺族様の心や立場を尊重し、技術と知識でもって悔いのないお別れができるようにします。
エンバーミングの費用
エンバーミングにかかる費用は15〜25万円ほどで、保険適用外です。これにエンバーミング施設への搬送費(往復)がかかります。
ただし、修復を無料で行ってくれるところや修復の度合いによって料金を設定しているところもあり、一概にはいえません。詳細についてはそれぞれの事業所へ問い合わせてください。
自社でエンバーミング施設を所有していない葬儀会社へ依頼したときは、料金が高くなる傾向にあります。
エンバーミングの注意点
エンバーミングの費用は決して安くありません。ですので、葬儀の費用や返礼品、御布施などトータルで計算して考えてください。そのためにも、必ず予算を確認しておきましょう。
もしエンバーミングを行いたくても予算が厳しいのであれば、葬儀にかかる費用で削れるところがないかを葬儀会社と相談してください。
死化粧の流れ
死化粧は一般的に次のような流れで行います。
- 医療器具の抜去
- 内容物の除去
- 口腔内のケア
- 清拭または湯灌
- 死装束の着付け
- 死化粧
故人様が病院で亡くなったときは、看護師が医療器具の取り外しから体内の内容物の除去、口腔ケアを行います。病院によっては死化粧まですべて行うところもありますが、それぞれ対応が異なります。
また湯灌は専用の浴槽で行われ、湯灌師によって行われます。湯灌はご遺族様が立ち会ったり、お手伝いをすることも可能です。
死化粧の際、ご遺族様が出来ることは主に以下の3つです。
- 清拭
- 着替え
- メイク
ご遺族様による死化粧
清拭(せいしき)は、体を拭いて清潔にすることを目的としています。一般的に病院や葬儀社が行いますが、希望すれば一緒に行えます。
このとき、眉や髪を整えたり、髭を剃ったりして故人様の身嗜みを整えられます。爪をきれいに揃えるなどしてもよいでしょう。
なお、清拭の際にこれまでは体液の漏出を防ぐために綿詰めを行ってきましたが、根拠に欠けるとして近年は専用ゼリーを使うか、そもそも行わないケースが増えています。
清拭のあとに服を着せます。たいていは白い浴衣ですが、故人様が生前好んでいた服を着用させることもできます。
メイクについては、故人様が女性であれば生前使っていたメイク道具を使ってきれいに整えられます。チークや口紅、アイシャドウなどが使えます。
ファンデーションを使うときは事前に保湿剤などで肌を整えてから、リキッドタイプを薄く塗ってください。ご遺体は乾燥しやすいため、固形ファンデーションや厚塗りをすると時間の経過とともに剥がれてくることがあります。
死化粧の費用
死化粧の費用相場は、病院に依頼するか葬儀社に依頼するかで変わります。
病院では死化粧から湯灌までおこなってくれるところもあれば、死化粧やお着替えのみ等さまざまで、費用は無料や数千円から15,000円程度が多いようです。
一方、葬儀社では化粧~お着替えまでが5万円程度、湯灌~化粧・お着替えまでは8万円~10万円程度。
病院との料金の差は、病院によって対応が異なるためです。故人様が亡くなってからの事後処理が死化粧まで含めて無料のところと、すべて実費としているところがあります。料金に関して気になることや不安があれば、病院に問い合わせてみましょう。
葬儀社に化粧とお着替えのみを依頼したときは、病院で清拭まで済ませてあることがほとんどです。湯灌と化粧、お着替えまで希望すると料金はやや高くなります。
死化粧の注意点
死化粧をご遺族様が行うとき、ご自身がふだん使っているものを使用することは避けてください。これは感染症のリスクがあるためで、もしご自身のものを使用したときは破棄することをおすすめします。
もしくは故人様が生前愛用していたものを使い、形見にすることもできます。
また、看護師や死化粧師などに死化粧を依頼するときは、宗教上の理由や慣習などの希望があれば必ず伝えてください。前髪を上げてほしい / おろしてほしい、本人が使っていた化粧品を使ってほしいなどの要望も同様です。
ご遺体のケアはおだやかな旅立ちのために
故人様のお顔が安らかであってほしいというのは、すべての人の願いでしょう。苦しそうな、辛そうなお顔をしている故人様を見ておだやかでいられるご遺族様はいません。
エンバーミングや死化粧は、故人様の安息のためであると同時に、ご遺族様が心を落ち着けてお別れできるようにするために行います。費用や技術など関係なく、悔いのないお別れができればよいのです。
故人様の旅立ちのために、ご遺族様の気持ちの整理をつけるために必要な選択ができるよう参考になれば幸いです。