日本で火葬を行う理由は?起源についても解説
日本で火葬が行われる理由は仏教圏のためです。
ほかに、公衆衛生上の問題を解消し、埋葬する土地を確保することが挙げられます。
今回の記事では、日本で火葬が行われる理由と火葬の起源について解説しています。
火葬の背景を知り、故人様の新たな旅立ちを静かに見送るために記事に目を通しましょう。
火葬する理由
日本で火葬が行われる理由は主に3つあります。
- 仏教圏のため
- 遺体と接触する機会が多い人の健康を守るため
- 土葬に必要な土地が不足しているため
仏教圏のため
日本は仏教圏のため、葬儀の約8割が仏式です。仏教が火葬を行う理由は2つあります。
- ブッダが火葬によって埋葬されたため
- 故人様の魂が新たな生を受けるため
仏教の開祖であるブッダは、死後に火葬され、遺骨は仏塔に納められました。仏塔はサンスクリット語でストゥーパといいます。なお、卒塔婆はストゥーパを簡略化したものです。
故人様の魂が新たな生を受けることを、仏教では輪廻転生といいます。輪廻転生とは、死後、新たに生まれ変わることです。輪廻転生についてより詳しく知りたいときは、以下のページをご覧ください。
なお、仏教では火葬を荼毘に付す(だびにふす)ともいいます。荼毘は仏教用語のため、仏式以外の葬儀では用いません。荼毘の意味や語源について知りたいときは、以下のページから確認できます。
遺体と接触する機会が多い人の健康を守るため
遺体と接触する機会が多い人の健康を守るのは、遺体の腐敗に伴う感染症のリスクがあるためです。
なお、一類感染症によって亡くなった人は24時間以内に火葬することが法律で定められています。一類感染症とは、感染力がきわめて強く、命にかかわるもっとも危険な感染症のことです。
現在指定されている一類感染症は、厚生労働省が公開しているPDFから確認できます。
【厚生労働省】新たに確認された一類感染症の原因病原体の 一種病原体等への追加について
土葬に必要な土地が不足しているため
土葬に必要な土地が不足しているのは、日本の国土面積が狭く人口密度が高いためです。また、遺体の腐敗に伴う感染症のリスクをはじめとした衛生上の問題があげられます。
ただし、現在の日本には土葬を禁じる法律はありません。そのため、一部地域では土葬できる可能性があります。
日本における火葬の起源
日本における火葬の起源は、飛鳥時代です。
日本書紀には、法相宗の開祖である道昭が700年に火葬されたと記録されています。また、702年に亡くなった持統天皇は天皇として初めて火葬されました。
以下に飛鳥時代以降の火葬を巡る状況の移り変わりをまとめました。
時代 | 火葬 |
---|---|
奈良・平安時代 | 火葬は貴族や僧侶など特権階級の人物に限られる |
鎌倉時代 | 火葬が一般市民に伝わり始める |
江戸時代 | より広く市民に火葬が伝わり火葬場が作られる |
明治時代 | 火葬禁止令が発令される |
奈良、平安時代にかけて、火葬は貴族や僧侶などの特権階級の人物を埋葬するときのみに行われていたとみられます。なぜなら、当時は火葬の技術や設備が整っておらず、身分によって埋葬方法が異なっていたためです。
鎌倉時代には仏教の教えが広まると共に一般市民にも火葬が伝わります。江戸時代にはより広く知られるようになり、火葬場が設けられました。
ただし、においを始めとした公衆衛生上の問題があったため、実際に火葬によって埋葬されるケースは少なかったとみられます。
明治時代(1873年)に火葬禁止令が発令されたのは、廃仏毀釈の動きが活発になったためです。ただし、土葬用の土地を確保することが困難になり1875年に撤廃されます。
以降、感染症のリスクを回避することを目的として、火葬が義務化されました。
【まとめ】火葬の際は故人様の新たな旅立ちを静かに見送ろう
日本で火葬が主流になったのは、仏教の影響です。また、公衆衛生の問題を解消し、埋葬する土地を確保するためでもあります。
なお、仏教では、火葬は故人様の魂を次の世界へ送り出すための儀式ととらえています。
火葬に立ち会うときは、故人様の新たな旅立ちと安らぎを願って見送りましょう。